「いいかねエドワード、外を出歩くときは、これをもっていきなさい」
えらそーに司令室の一番奥鎮座された大佐様は、その態度よろしく険しい顔でえらそーに、机の上に広げられた護身用具を前に言う。
「……何これ」
催涙スプレー・特殊警棒・スタンガン・アラーム、何これベルト?というと、鞭みたいなものだよという返答。…手榴弾?これは本当に護身用なんですか。大体守るべき身体は一個しかなくて、扱う腕は二本しかないのにこれを全部一体どうしろと。まず持ち運べねぇ…。
「いや、こんなにいらねぇよ…鞄入らん…」
「もっていたまえ、命令だよ」
有無を言わせぬこの口調、大体過保護なんだよと言ってやりたいけれど、二日前に泣きながら司令室に保護された手前、あんまりえらそうに啖呵を切れない。もう大丈夫だよって言ったのに、真っ青になった俺を見て顔色を変えた中尉とアル(いや、アルは最初っから顔色悪いっちゃ悪いけどさ。鎧色。)、半泣きの俺を抱えて司令室に。そこからが大変だった。大佐がキレて発火布持ち出すわ、ハボック少尉が俺着替えてきますってえー、ジャクリーン!?とか、闇でホークアイ中尉が銃身磨いてた。一番怖かった。
「……何で発火布混じってんの?」
「お守りだよ。愛の」
「あそ」
丸めて大佐にぶつける。反射神経が鈍いのか、まともに顔で受け止めてひるむ大佐。おおっ、これ意外と使えんじゃん。
満足げにぱっぱっと手をはたいて、念のため机で拭いて(だって大佐の「愛」が手に付いちゃってるかもしれないし)、はいバリア、俺に回すなよというと、君はどこの幼稚園児かね、と。あ、何この遊び、大佐の子供のときもあったの?

ただいま戻りましたとブレダ少尉の声、暑い中街の巡視・可哀相に汗かいて、でも痩せそうだよねとは……そこまではさすがに俺も。
「ご苦労、不審人物はいたか?」
「いえ、まったく」
「そうか、よかったな鋼の。これで安心して帰れるね」
「うん、まぁ…よかったけど。俺そこまで別に…」
「わーん大佐ー怖かったよーと泣きついてきたくせに」
「護身用具にゴキスプレー付けてくれたら喜んで活用させてもらうけど。今ここで」
「はっはっは」
「それより大佐」
ブレダ少尉があきれた声音を隠そうともせずに。うん、わかるよその気持ち。なんかほんと、ゴキスプレーないかな。
「なにかね?」
「大将、二日前もこの格好だったんすよね?」
「この服が鋼のの一張羅だから、ね?」
「そうだけど、なんで?」
「………無視した…」
もうあえて相手にせずに。案の定、悲しそうな声で呻くロイマスタング。
「いや、大将、この格好でよく女の子に間違えられましたよね」
間違えられたという言葉が正しいかはともかく、そういえば、確かに。そういえば気づかなかった、アルも大佐もハボック少尉もいつもは冷静な中尉も、今ちょっと皆過保護で盲目になっているから誰も疑問を抱かなかったけど。いつもと同じ服、声はちょっと高くなったけど、第一あのナンパやろうに話しかけられたとき、俺しゃべってねぇし。胸はつぶす必要ないほど小山だし。俺のこの姿をみて、女の子って思うほうがおかしくねぇか?
「いや、そんなことはないよ、ブレダ少尉。鋼のの魅力はこう、内側から」
「ごめん。こいつこれ、つまんない冗談じゃなくて本気で頭腐ってるから、ちょっと無視して。」
「わかった」
「こら!」
「とにかく」
ブレダ少尉はあっさりと大佐の言葉を受け流した。かなり慣れてるよな、きっといつもこんな感じなんだろうな。えらいえらいって持ち上げられて、一番奥の偉い席座ってるつもりで、実はそこ一番窓際に近いんじゃねぇのみたいな。大佐ちょっと可哀相…って思ってやるよ、心の中だけでな。
ちょっとまぁ色々あたってみますわ。と退室したブレダ少尉に、ありがとーと手を振って、未だぷんぷん怒っている大佐に、俺ももう帰るからなーと。

今日は一日、平和。