殺人。(ロイエド・ブログ4/23収録。短。エロくはないけど精神的にはR指定)
正直、最初は恐かった。嫌だった。でも、そうしなきゃ、俺が殺されると思った。
血生臭い戦場。爆音。悲鳴。耳障りだ。五月蝿い。
俺は振り返りざまに拳を繰り出した。
肉に拳がめりこむ感触。気持ち悪い。血が、俺の頬を汚す。
相手が抵抗する前に、俺は錬成した槍で突き刺す。
原始的な殺人方法。それでも俺は銃を使おうとは思わなかった。
というより、銃の存在を忘れていた。
夢中になって殺した。
周りにいるすべてに死を。
汚い、五月蝿い、その全てに憎悪を。
そして、俺に生を。
俺に光を。
遠くで撤退命令を聞いた。
それは耳に馴染んだ、低くともよく通る声。
あのエロ声上官が。
俺はそんなことをぼやきながら、そこらへんに転がるゴミを踏みつけてのろのろと彼の元へ向かった。
恐かったか?とあいつは聞いた。
全然、と俺は答えた。
「たいしたことなかった。」
「君は人殺しはしないのではなかったのかね?」
無駄なこと覚えてくれてんだな、と言いかけてやめた。
「気が変わった。」
それだけ言った。
「まぁ君が役立たずにならなくて良かった。これで私の顔もたつというものだよ。」
あいつはそういって、微笑んだ。
「ほら、おいで?可愛がってあげるから。」
「…こんなところで?」
「嫌かね?」
軍の作戦本部。
東方司令部のさらに向こう側にある、小さい村の軍支局。
安物でかび臭い部屋しかない。
俺は返事をしなかった。
無言のまま、軍服に手をかける。
全裸になって、俺はあいつに跨った。
自分の性器をその青い軍服に包まれた太腿にこすりつける。
「鋼の?えらく積極的だな。」
「……苛々してんだ。」
「…疲れたのか?」
あいつはそう言って、俺の顎を優しく持ち上げた。
俺はあいつが唇をかさねる前に首を伸ばした。
口内を舌でたっぷり愛撫してから、俺はあいつを睨みあげた。
「疲れてなんかない。」
「そのようだね。物足りなかった?戦場が。」
あいつは動揺した様子は微塵も見せない。
いつも余裕ぶって笑って、俺をこども扱いして。
そう見せかけて俺の身体を弄んで。
意味がわからない。どこまでが嘘なのか。
どこからがホントなのか。
あいつは、俺の髪留めを解いた。
まとめていた金髪がだらりと肩に落ちる。
「………ゴミばっかだった。」
「ん?」
「汚くて五月蝿いばかりだった。」
「そうだね。戦場なんてそんなものだよ。」
なにか期待していたのかい?と問い返され、俺は言葉につまった。
何か期待していたのか。してなんかない。
俺は軍の狗として戦場に召集され、マスタング大佐の指揮下、その任務を正確に遂行するために来た。
何も期待などしてはいない。
何も絶望などしてはいない。
俺は、弟と元の身体に戻ると決めた瞬間から、人間を捨てている。
狗に成り下がっている。
現実に、何も期待はしていない。
そしてもう、絶望することもない。
「泣いているのかい?鋼の。」
泣いてなんかない。
俺は顔を上げた。
暗い照明の中、あいつの黒い瞳に映った俺の瞳は渇いていた。
「泣いてなんかない。」
そう言う俺を、あいつは優しく抱き寄せた。
「泣いてなんかない。」
俺は理性を手放した。
ただ快楽に腰を振る、狗に成り下がった。