アル視点続き。
手を繋いでいると、気持ちとか、考えとかが、相手へ流れてしまう気がする。
僕は、兄さんと繋がった手を見て、思った。
夜中の4時。むしろ明け方なのかもしれない。
冬場の夜明けは遅いから、まだまだ太陽の光はないけれど、僕にはそんなことはあまり関係ない。
兄さんが起きれば、朝がはじまる。
朝は、僕を解放してくれる。そう、兄さんが、解放してくれる。
は、久しぶりに兄さんの寝顔を見た。
長い金髪は、昔の僕と同じ色。白い肌に、綺麗な金色の睫毛。
寝顔は、ほんとに昔から変わらないんだなぁ、と僕は思った。
その時、兄さんの瞼がぴくぴくと動いた。
うっすらと、その金色の瞳が開いて僕を捉える。
「アル?」
「あ、兄さんごめん…起こしちゃった?」
聞くと、兄さんは頭をふった。
それから、そっと僕の手を握り返して、微笑む。
「ん、大丈夫だからな、アル。お前は俺が元の身体に戻してやるから。」
兄さんはそう、寝ぼけたように言って、また眠りに戻った。
夜明けの5時前。僕は昔のことを思い出していた。
何も考えずに一晩を越えようと、いつも努力はするのだけれどうまくいかない。
それどころか、考えまいとすればするほど、頭に蘇る恐怖。
そして、ぶつぎれる記憶。
兄さんの、遠くで僕を呼ぶ声。叫び。泣き声。絶叫。
母さんの匂い。
鏡に写った、鎧の身体。
「大丈夫か、アル。」
兄さんの声で思考は中断された。
「あ、に、兄さん…」
また起こしてしまった。もしかしたら、無意識に手を強く握りすぎていたのかもしれない。
「ごめん…」
「何が?」
「起こしちゃって…」
兄さんは、はぁ?と言って、それから笑った。
「何言ってんだよ、アル。俺に気でも使ってんのかー?」
「そりゃ使うよ多少は……何度も起こしちゃって…」
僕が言うと、兄さんはますます可笑しそうに笑った。
「俺なんかにアルが気回さなくていーの。俺はお前の兄さんだぞ。」
兄さん、の部分だけわざと声をひっくりかえして言う兄さんが面白くて、僕も笑った。
僕が笑うと、兄さんもまた笑った。
「ま、そーゆーことだ。俺はアルの側にいるから、淋しくなったら手ぇ握れ。」
な?と笑ってくれる兄さんに、僕は、うんと頷いた。
鉄の身体なのに、その手の部分だけとても温かいような気がした。
ブラウザバックで返りましょう。