*超短いです(のあこブログ再録)


ひどく苛立つ。あいつの言葉なんか聞きたくない。
回りくどい表現なんかいらない。俺は科学者だから比喩もいらね。
ただ、もうどうしようもなく、ウザイ。ウザイんだ。
「どうしたの?鋼の。」
「なんでもね。」
「さっきからほら、眉間に皺が…」
「るせぇさわんな。」
拒否権はあるはずだ。俺はのばされた手を振り解いた。
ウザイ。この男。マジでウザイんだって。
「鋼の…」
傷ついた顔すんな。ほんとは俺の言葉なんか、これっぽっちも効いちゃいないんだろ?あんたの頭は他のことでいっぱいなくせに。
俺は読んでいた本に再び目を落とした。文字を追いかけることに集中する。でも一度切れた集中力。もどかしい。場所は日当たりのいいオープンカフェで喧騒が耳にいちいち五月蝿くて。あぁ、本の向こうに大佐と嫌味にいちゃつくカップル。やだやだ、見たくない。俺は本を閉じた。立ち上がる。慌てたのは目の前にいた大佐。
「は、鋼の……??」
せっかくのデートなのに俺は終始不機嫌でそんな俺に大佐はやたら優しく構ってくるばかりで怒りもしない。せっかく貴重な時間を削ってこうしているのにちょっとは怒れよ。キレろよ。鋼の、鋼の、ってやたら甘い声だしてんじゃねーよ。ウザイ。ウザイ。
俺は大佐を無視して大通りへ出る。大佐は店に金を払ってから俺の名前を呼びながら追いかけてきた。横に並ぶ。
「ど、どこへ、行くのかね。」
「どこでもいいだろ、ほっとけ。」
「ほっとけって言ったって……。」
困ったような顔。俺は肩越しに見やった。目が合って少しだけ嬉しそうな顔。でも次の瞬間大佐の名前を呼ぶ女の声に視線が移って女に手を振って馬鹿みたい。嘘の愛想笑いなのに女が喜んで声あげて。嘘の笑顔なのに。愛想なのに。馬鹿じゃね?あーあ、馬鹿。

馬鹿なのは俺だっつの。

「どこへ行くんだね、鋼の。この方向だったら…」
「あんたんちだよ、ばーか。」
ばーかばーかって連呼して。
結局最後はそういうオチなんだってわかってんだよ俺だって。あーあ、なんて愚かしい。