*エド出てきません
*超短いッス(のあこブログより再録)
*リザ→ロイエド風

何もない日は本当にお役所仕事なのにこの軍部は、と柄にもないことを考えた自分に向かって彼女は嘆息した。
そんな邪念は振り払わなければ、と意識を前に後ろに、左右に巡らせる。
銃身に光るサイレンサーを確認して、柱の影からそっと、眼前の背中を貫く。弾丸と飛び散る血液を彼女は見た。しかし彼女は崩れゆく体を見ない。すでに場所を変えている。
そうしてそこに潜むテロリストたちを何人も何人も始末した。

廃墟を最後に燃やしたのは彼女の上司。
汚れひとつない手袋が癪なほどに白くて眩しくて彼女は視線を燃え盛る建物に移した。
「終ったな。」
「後処理があります。」
「そうだな。それが一番面倒だ。それに一番つまらん。」
「……そうですね。」
彼は手袋をつけたまま、両手を無造作にポケットにねじりこんだ。

出来れば人など殺したくはなかったけれど軍人になったから仕方ない。
そういう割り切り方を彼女は選ばなかった。
汚れない手を血色の水で洗う上司を、ただ唯一守るに値する人間だと決めた時に彼女は彼と同じ水に浸かりたいと思った。浸されたいと思った。そうすれば彼の心の光も闇も見えるかもしれないと。しかし視界はますます曇るばかりで何も見えなくてそれでも守りたくて、苦しみばかりが翼を広げてそれでも彼から離れられない。
彼女は自身が見えなかった。それでも、その手を血色の水で汚し続けた。

私には止める権利がないと、思うのだ。
いくら殺しても殺してもその手に傷を付けることが出来る人間なんていないのに。
もうやめればいいのに。

あるいはもしかしたら。
彼女は車に乗り込む上司の背中を見ながら思考した。
あるいはもしかしたら。
あの子なら、その手に傷をつけることが出来るかもしれない、と。