薬物中毒、というのがあるらしい。
まだまだ無名の病気だけど、それでもそれは徐々にこの国を侵食してるらしいってのを大佐から聞いたことがある。
それも特に、軍部内で。
戦場では酷い怪我をしてしまったり、精神的に壊れてしまったりする人間が多数出て、それを落ち着かせるための薬に依存性があるらしい。
依存性。薬。
なんでそんな情報、今さら思い出すんだよ。
俺は胸中で呟いて、唇を歪ませた。歪ませた端っこからもれた、重たい吐息はベッドに沈んで。
沈黙、ではない。ベッドのきしむ音、衣擦れの声、俺の、息遣い。
俺は必死になって手を動かした。ぐちゅぐちゅと濡れた音が聞こえる。
あっ、あっ、あっ……
だめだ、と俺は小さく呟いた。だめだ、全然だめだ。
枕におしつけた頬。汗ばむ四肢。べたつく素肌にまとわりつく布団。
放置された前から垂れた透明の液体を俺は乱暴に拭い取って体制をうつ伏せから仰向けに変えて布団を蹴飛ばした。
引かれたカーテンが揺れる。やべっ、窓開けっぱか?でも、もうそんなことはいいや。
俺は夢中になって、濡れた手を後ろの孔に塗りこんだ。後ろの孔、機械鎧の先がずぷずぷと抜き差しを繰り返されているそこ。俺は一度、醜く変形された機械鎧を引き抜いた。
あぁんっ
思わずもれる声に理性が飛びそうになる。淫乱って言葉が脳裏をかすめる。
俺はその、血と先走りで濡れたものに舌を伸ばした。綺麗に舐めとって、もう一度錬成し直す。
だめだ、こんなんじゃだめだ。足りない、何かが足りないんだ。
まがまがしい形のそれ。ごつごつとした表面とさきっちょについた大きなカサ。俺はなめた。そこからは何も出てこないけれど。
そしてそれをもう一度、後ろへ挿入する。奥へ奥へ、自分の一番いいところを探して手を伸ばす。
でも、足りなかった。前は硬くなって上を向いてベッドに染みばかり作るのに。
ああ、何かが足りない。飢える。俺は半泣きになりながら男の名前を呼んだ。
男の名前を呼びながら、その姿を想像しながら、その手に頭で犯されながら。
白濁をティッシュにくるむどころじゃなかった。
大佐に会ったら絶対セックスしようなんて、そんな決意固めてどうすんだよ俺。と俺は得意の一人つっこみ。息ぴったりと評判のいい弟にこんなボケ告白なんてできねーからそれは仕方のないことで。
俺は東方司令部に顔を出して定例通り大佐に嫌味を言われて切れて怒ってわめいて弟にたしなめられて。
別れ際に大佐の耳元に背伸びして、今晩あんたんちに泊まってやらぁ、つった時の奴の驚いた顔。俺は爆笑してばかだな、信じてんのかよ。図書館に行くからって言葉残してその場を去って。
夕方、大佐の家にあがりこんで奴の帰りを待つ俺ってなんてかいがいしい新妻なんだ。
いたのかね、鋼の。
そういう言葉を発した大佐、ロイ、に俺は助走付き抱擁でお出迎え。腕をまわせば結構硬いからだ、腹筋も胸板も背中だって硬い。俺は抱きついたままキスをせがんで、なんだね昼間との格差は、とか文句言いながらも応じてくれる大佐に喜んだ。
舌で誘ってロイの舌が入ってきて、長い長いキス。そのまま俺の耳と首に舌を這わせてエロい声で感動の再会を喜ぶ臭いセリフに俺の股間が熱くなって、本当に単純。思春期の雄って怖い。
俺は猛った性器をロイにすりつけた。
なぁ、やろう?
上目遣い。俺は言ってロイの軍服に手をかけた。ロイは優しく笑って、俺の服を脱がせる。
玄関の明るい照明。俺は全裸でロイに抱きついた。白い肌と硬い腹筋。舌を伸ばしてその香水と汗の臭いのするからだを味わう。
ロイは俺の背中を廊下の壁に押し付けた。衝撃に息つく暇すら与えられないキス。唾液が入ってきてロイの手が俺の前を擦りあげて濡れた手で後ろの孔に挿入される指。
そう、ロイの指。俺は悶えた。あぁ、想像していたよりも彼の指は長くてごつごつしていてたまらない。
指はどんどん増やされた。俺は掠れた声で鳴き続けた。
あっ、あっ……
ロイ、はやく、はやくいれてよ、なぁ?ロイ…
俺はわめいた。性器は腹につくくらい反り返って痛みすら感じる。
淫乱な子だね、私とそんなにやりたかった?
ロイの声は普段と違って熱っぽくてそれが鼓膜に熱く分厚く沈殿する。
はやくはやく、ロイの熱いのちょうだい。
俺が言うと熱いさきっちょが孔にあてがわれる感触。これ、そうこれが欲しいの。俺は腰を進めた。ずぶずぶずぶ。内壁を押し割って入ってくる侵入者。いやらしい水音。想像なんかよりもはるかにすごい衝撃。
あったかいね、君の中は。エドワード、すごくいいよ、すごくいい。
ロイは抜き差しを開始する。最初はゆるゆると、それから段々に速められる快感に俺は酔った。ロイの背中にしがみつく。爪を立てる。
もっと、もっと奥、い、一番いいとこ知ってんだろ?俺の一番いいとこ、早く突いて…
俺は喘ぎの合間に叫んだ。身体が熱い。汗でべとつく背中が壁にこすられて痛い。ロイの荒い息遣い。彼は俺の耳もとに舌を這わせながら、きもちいい、と言う。
きもちいいね、君の中は淫乱だ。そこだけいやらしく蠢いているよ。
生々しい表現が好きだ。俺はそれだけでイきそうになる。あぁ、もっと言って。もっと言って。ロイにせがんで爪をたてる。ねぇ、もっと言って?
エド、エドの肛門は淫乱なメスだね、ほらこんなに私の性器をくわえ込んで放さないよ。しめつけて、こんなに熱くして、ここはこんなことのためにある器官ではないのにね。排泄物を排出するところから性的快感を得るなんてとんだ淫乱だな。いけない子だ。
言いながら一番気持ちいいところを突かれて俺は高い声で鳴いた。
あぁんっ、い、いやぁ、そ、そこっ、そこがぁッ……
ここがいいのかね?こんなに腰を振って前からも涎を垂らして…べたべただよ。
一人でしても足りなかったもの。ロイの声と言葉と体温と与えられる全ての快感。
依存症ってこういうことなのかな。ねぇ、ロイ、依存症って俺は病気なのかな。そういうことを胸中で思ったけど口にするのは野暮ったい気がしてやめた。
俺は馬鹿みたいに単純な言葉だけをならべ続けた。涎をぬぐうこともせずに、白い頬を少しだけ染めて汗ばむロイの唇に吸い付いた。
あッ、あぁっ……も、だめっ、イ……イくぅ……っ
私も、もうイきそうだよ…
耳もとで呟く熱っぽいロイの声と耳の穴に挿入される舌の感触に震えた俺はそのまま自分の腹に吐精した。
そしてほぼ同時に、俺の直腸内がロイの出した熱い白濁に満たされた。
崩れ落ちた背中を、ロイが優しく抱いてくれた。
依存症だ。ロイの薄まった香水の香りと汗の匂い。俺はロイを抱き返した。
彼は俺の耳元で、愛してるよ、と言ってくれた。
愛って薬だ。俺が言う。それもタチの悪い薬。ねぇ、ロイ。あんたが昔話してくれた薬物中毒に似てるよな。
俺の言葉にロイが笑う。そうだね、似てるかもしれないね。
似てるんじゃなくて、そうなんだってば。
ロイの腕の中で言う。ロイが俺の前髪を払いのけて、額に唇を落とした。
じゃあさっきは薬が切れてたのかね?あんなに激しく求めるなんて。
俺は鼻から抜けるように笑った。ロイの顔を、黒い瞳を見据える。
まだまだ全然足んねぇ。
言ってくれるね君。
苦笑するロイに俺は笑った。